TOKYO Grappling Dreamer~10.28ハードヒット観戦記~
10.28の夜は、東京タワースタジオまで「ハードヒット」を観戦してきました。
「ハードヒット」とは、プロレスラーがUWFルールで闘うなど、総合格闘技色の強い興行で、かつてはDDTプロレスリングの一ブランドでもありました。
現在は、数年前にハードヒットのブランドがDDTから佐藤光留に譲渡され、年に3~4回ペースで興行が開催されています。
今大会では全試合、
・打撃技(掌底、張り手、蹴りetc…)禁止
・ロープエスケープや、相手をロープに振る攻撃は禁止
・(相手をマットにたたき付ける)バスターやスープレックス系の攻撃はOK
という、"グラップリング"や"寝技"に特化したルールで行われました。
大会名も『君の寝技に恋してる』と、非常に分かりやすかったです(笑)
公式サイトでは全試合のレポートが詳細に書かれているので、今回は私なりにハードヒットの感想を綴っていきたいと思います。
■"打撃技禁止"だからこそ浮かび上がる、新たな選手の一面
今回は寝技に特化したルールでの試合という事もあり、(当然ながら)蹴りや張り手の"バシン!"、"ベチッ!"といった打撃音が殆ど無し!
時折、反則でも掌底や張り手をかます方もいましたが(笑)
個人的に、エルボーや蹴りが凄まじい印象のある井土徹也(HEAT-UP)や、阿部史典(プロレスリングBASARA)といった選手が、打撃技禁止のグラップリングルールでも、存在感を発揮していたのが興味深かったです。
井土はクリスMAN太郎をあと一歩で締め落とすスリーパーホールドを見せていましたし、バッチバチなスタイルが印象的な阿部も、寝技スタイルな土俵で躍動してましたから。
そう考えると、井土や阿部がプロレス教室の講師を務めている、HEAT-UPの道場って凄いんだなあ、と、試合を見ていて感じた次第です。
■"打撃技"も込みで見たかった「松本崇寿vs和田拓哉」
その一方で、今大会の目玉の一つでもあった「寝技トーナメント」ですが、個人的に盛り上がりに欠ける場面が多かった印象です…。
全4選手による1dayトーナメントでしたが、"互いに決定打が少なかった"判定決着が多く、どこか消化不良な所も感じました。
実際、大会前「このトーナメントを優勝した選手が"寝技が強い"と言っても良いです」と語っていた佐藤光留が、大会総括で以下のコメントを残したくらいですから…
打撃ありでやりましょう。じゃないと選手本人たちもお客さんたちも、何よりプロデューサーも納得いってないでしょう。だって「ハッシュタグつけて寝技最強のレスラーはこいつだって言ってください」って、なぜ言ったかといったら、それに相応しいものを見せてくれっていう意味で言ったんです。あの試合がじゃあ相応しかったかと言ったら、絶対に本人たちも「そうです」って胸張って言えないはずなんです。結果的にそう(=和田の優勝)なったけど、一番強いっていうのは圧倒しなきゃいけないものですから。それを見せられたかっていったらNOだと思うんですね。じゃあ、(再戦を)やるしかないですよ。
私としては、決勝で判定決着となった 「松本崇寿vs和田拓哉」なんかは、年内最後のハードヒットの大会(12.29)で是非とも実現してほしいなあ、と思っております。
■"ロープエスケープ禁止"が彩りを加えたタッグマッチ
この日はタッグマッチも2試合組まれました。
第1試合 ×服部健太、クリスMAN太郎vs○飯塚優、井土徹也
私自身、過去に2度、ハードヒットの観戦経験があるのですが、その際は互いに5ポイントある状態から、ダウンやロープエスケープでポイントが減っていく「UWFルール」での試合が主でした。
(完全に私の好みですが、)個人的にハードヒットのタッグマッチは、タッグならではの連携を楽しむというより、"シングルプレイヤー同士がタッグを組んでいる"という印象が強かったです。
しかし、今回のハードヒットでのタッグマッチは、タッグ同士の連携を感じられた分、見ていてとても面白かったんですよね。
個人的に、"ロープエスケープ禁止"という形式がポイントになっていた気がします!
と言いますのも、ロープエスケープ禁止な分、「パートナーにタッチ(交代)してエスケープする」というシーンがタッグマッチで度々見られたからです
事実上、自軍のコーナーまで行かなければ、(関節技を極められていても)エスケープが出来ない、ハラハラドキドキしたシチュエーション…
特に第6試合は、その辺のやり取りが存分に発揮されていた試合だったと私は思います。
4選手全員がグラップリングルールであることを感じさせないぐらいに、ガンガン動いていましたから!
個人的に、今大会の中でも、この試合は頭一つ、二つ抜きん出ていたという印象が強かったです。
■選手、レフェリー、興行主の矜持を見た「高橋'人喰い"義生vs藤原喜明」
グラップリング主体で行われた今大会のメインイベントは、 「高橋"人喰い"義生vs藤原喜明」
師弟対決となったこのメインイベント
会場の座席に配布されていた高橋のスペシャルインタビュー記事によると、2人の付き合いが始まって27年目で、今回が初対決だったのだとか
試合自体のインパクトも当然凄かったんですけど、それ以上に凄かったのが、「高橋レフェリーストップ⇒再戦」までの流れでした…
メインが始まって2分も経過しないうちに、藤原喜明の関節技が高橋にガッチリ極まると、和田京平レフェリーがゴングを要請!
この結果に納得の行かない高橋が、和田京平に詰め寄る、緊迫した雰囲気に
その後、和田京平が藤原の手を挙げようとするも、藤原はこれを拒否して再戦の構えに
高橋も藤原の再戦要求に応じますが、和田レフェリーは頑として応じず
ついには、ロッキー川村や佐藤が間に割って入る異例の事態に!
そんな緊迫した場面の中、興行主である佐藤はこう言ったのでした…。
「レフェリーが勝ちって言ったら勝ちなんですけど、僕は二人の『やりたい』って気持ちを止める術を知りません。なので、二人が納得行くまでやる、というのはどうでしょうか?」
この発言に押されたのか、和田レフェリーは高橋に「次は止めないよ?」と確認したうえで、これを了承
急遽、再試合が実現することになったのでした。
再試合では、高橋が藤原を締め落とす寸前まで追い詰める動きを見せますが、直後に藤原が一瞬の隙を突いて高橋を締め落とすという、衝撃の展開で藤原がレフェリーストップ勝ちを果たしたのでした…。
北側の座席から試合を見てましたけど、高橋が締め落とされて負けた瞬間は結構衝撃的でした。
攻めのポジションに入っていた高橋が、数秒後には敗戦のゴングを聞く事になるとは…😱
再試合の終了直後、瞳孔が開き、四つん這いの状態で震え、立ち上がることもままならない高橋の姿が、観戦から一週間以上が経った今でも忘れられないです…
■まとめ
久しぶりに観戦したハードヒット…
今大会の試合前挨拶で、佐藤がこんなコメントを残していました。
「プロレスを見ていたら最初のレスリングをもっと見たいなと、お客さんから言われることがあります。」
個人的に、今回のグラップリングルールでの興行は、まさにこの"最初のレスリング"という言葉に集約されていた気がします。
こういうレスリング主体の試合にスポットを当てたプロレス興行って、日本広しといえども中々貴重な気がします。
(偏見込みで言ってしまいますが、)打撃技や空中殺法に比べてしまうと、寝技というのは、今現在の日本プロレス界で、どこか地味に映ってしまう時があるのかも知れません
しかし、私自身、こういう寝技の良さを教えてくれる興行に出会えた事で、新たな選手の一面や、普段プロレスを見ていて気付かなかった寝技の面白さ等を感じることが出来ました!
これは間違いないです!
年間の興行回数は少ないですが、その中でも、プロレスだけに留まらない魅力をプヲタに提供してくれるハードヒットは、とても素敵な興行だと私は思うのです😌
また行きたい!